※本記事は、2026年8月19日のこども家庭審議会障害児支援部会・社会保障審議会障害者部会の資料を基に、法改正と基本指針の改正案の概要を整理したものです。改正法の成立・公布状況や、今後の政省令・通知の内容によって、制度の詳細が変更される可能性があります。(医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律の改正を踏まえた基本指針の改正等について-p.1)
医療的ケア児支援法の改正で何が変わる?
「医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律」は、2021年の制定以降、医療的ケア児が保育所や学校などで生活しやすくなるための支援を進めてきました。(医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律の改正を踏まえた基本指針の改正等について-p.1)
一方で、18歳を迎えた後の支援、家族のレスパイト、就労、通学、災害時の備え、地域による支援格差などが課題となっています。(医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律の改正を踏まえた基本指針の改正等について-p.1)
こうした課題を踏まえ、今回の改正案では、支援対象を成人を含む「医療的ケア児等」へ広げるほか、重症心身障害者も対象に加える方向が示されています。(医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律の改正を踏まえた基本指針の改正等について-p.1)
また、医療的ケア児支援センターの名称・機能の見直し、医療的ケア児等支援地域協議会の新設、自治体の障害福祉計画・障害児福祉計画の見直しなども盛り込まれています。(施行令の制定及び基本指針(障害福祉サービス等及び障害児通所支援等の円滑な実施を確保するための基本的な指針)の改正について-p.3)
資料では、改正法の施行日を2027年4月1日としています。(医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律の一部を改正する法律概要-p.1)
主な変更点
今回の主な変更点は、次のとおりです。(医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律の一部を改正する法律概要-p.1)
- 「医療的ケア児等」を支援対象に追加
- 重症心身障害者を支援対象に追加
- 18歳以降も切れ目なく支援する基本理念を充実
- レスパイト、通学、就労、住居、ピアサポートなどの施策を拡充
- 「医療的ケア児支援センター」を「医療的ケア児等支援センター」に改称
- 支援センターを設置できる自治体の範囲を拡大
- 医療的ケア児等支援地域協議会を新設
- 個別避難計画の作成への協力や、災害時の情報提供を支援センターの業務に追加
- 障害福祉計画・障害児福祉計画に、対象者のニーズやコーディネーターの配置見込みを反映
ただし、これらは支援体制の整備を進めるための法制度や計画上の方向性です。法律上の対象者に含まれたことだけで、すべての障害福祉サービスを自動的に利用できるようになるわけではありません。(医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律の改正を踏まえた基本指針の改正等について-p.1)
支援対象を成人を含む「医療的ケア児等」へ拡大
改正案では、従来の医療的ケア児に加え、次のような人を含む「医療的ケア児等」が支援対象として示されています。(施行令の制定及び基本指針(障害福祉サービス等及び障害児通所支援等の円滑な実施を確保するための基本的な指針)の改正について-p.3)
- 医療的ケア児
- 医療的ケア児であった者で、日常生活や社会生活を営むために恒常的な医療的ケアが必要な人
- 恒一的な医療的ケアが必要で、そのために自立した日常生活や社会生活を営むことが難しい状態にある人
つまり、医療的ケア児であった人が18歳を迎えた後も、医療的ケアが必要な状態であれば、支援の対象に含まれ得ます。(医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律の改正を踏まえた基本指針の改正等について-p.1)
また、重度の知的障害と重度の肢体不自由が重複する「重症心身障害者」も、新たに支援対象に加えられます。児童の場合は「重症心身障害児」と呼ばれます。(医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律の一部を改正する法律概要-p.1)
もっとも、法律上の支援対象に含まれることと、個別のサービスを利用できることは別です。実際の利用には、サービスごとの要件に基づく申請や自治体の支給決定などが必要になります。(施行令の制定及び基本指針(障害福祉サービス等及び障害児通所支援等の円滑な実施を確保するための基本的な指針)の改正について-p.3)
レスパイト、通学、就労、住居などの支援を拡充
改正案では、本人だけでなく、家族の生活や社会参加も含めた支援の充実が示されています。(医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律の一部を改正する法律概要-p.1)
保育・教育
保育・教育分野では、次の施策が挙げられています。
- 喀痰吸引等を行える介護従事者の配置
- 社会的養護体制の拡充
- 生涯学習の推進
附帯決議では、医療的ケア児等や重症心身障害者が、保護者の付き添いがなくても通学できるよう、必要な支援を続けることも求められています。(医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律の一部を改正する法律附帯決議(令和8年7月10日)-p.4)
家族のレスパイトと日常生活支援
家族が一時的に介護から離れ、休息を確保するためのレスパイト支援や、通学支援などの日常生活支援も施策として位置付けられています。(医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律の一部を改正する法律概要-p.1)
短期入所については、医療的ケア児や重症心身障害児者のニーズを把握し、地域で計画的に提供できる体制を整えることが基本指針に盛り込まれています。(施行令の制定及び基本指針(障害福祉サービス等及び障害児通所支援等の円滑な実施を確保するための基本的な指針)の改正について-p.3)
医療・就労・住居
生活・就労分野では、次の支援が示されています。
- 切れ目のない医療の提供
- 就労支援
- 住居の確保
- ピアサポート
就労については、附帯決議で、職場や通勤中の介護について、雇用施策と福祉施策の連携を踏まえて支援の在り方を検討することが求められています。(医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律の一部を改正する法律附帯決議(令和8年7月10日)-p.4)
なお、具体的なサービスの内容や利用条件は、既存の障害福祉制度や自治体の運用によって異なります。(医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律の改正を踏まえた基本指針の改正等について-p.1)
支援センターを「医療的ケア児等支援センター」へ
現在の「医療的ケア児支援センター」は、改正後、「医療的ケア児等支援センター」へ名称変更される方向です。(施行令の制定及び基本指針(障害福祉サービス等及び障害児通所支援等の円滑な実施を確保するための基本的な指針)の改正について-p.3)
支援対象には、医療的ケア児だけでなく、医療的ケア者、重症心身障害児者、その家族が含まれることになります。(施行令の制定及び基本指針(障害福祉サービス等及び障害児通所支援等の円滑な実施を確保するための基本的な指針)の改正について-p.3)
主な業務として、次の内容が示されています。
- 本人や家族の相談に応じること
- 情報提供や助言
- 医療、保健、福祉、教育、労働、防災などの関係機関との連絡調整
- 関係機関への情報提供や研修
- 個別避難計画の作成への協力
- 災害時に市町村と連携した情報提供
- 進行性の疾病を有する人などへの相談支援
設置できる主体も広がります。都道府県に加え、指定都市、中核市、その他の政令で定める市、特別区の長も設置主体となることができます。(施行令の制定及び基本指針(障害福祉サービス等及び障害児通所支援等の円滑な実施を確保するための基本的な指針)の改正について-p.3)都道府県が広域的な支援体制を整備することを基本としつつ、指定都市、中核市、その他の政令で定める市、特別区は、都道府県と連携し、地域の実情に応じて支援センターを設置することが重要とされています。(施行令の制定及び基本指針(障害福祉サービス等及び障害児通所支援等の円滑な実施を確保するための基本的な指針)の改正について-p.3)
災害時は個別避難計画の作成に協力
改正案では、支援センターの業務に、個別避難計画の作成への協力や、災害時の情報提供が加えられます。(施行令の制定及び基本指針(障害福祉サービス等及び障害児通所支援等の円滑な実施を確保するための基本的な指針)の改正について-p.3)
ここでいう「協力」は、支援センターが避難を直接実施したり、個別避難計画を単独で作成したりすることを意味するものではありません。市町村が中心となって作成する個別避難計画について、支援センターが本人の医療的ケアや生活状況に関する情報提供などを行い、関係機関との調整を支える位置付けです。具体的な避難先、避難方法、医療機器の電源確保、医療的ケアの継続方法などは、居住する自治体や関係機関との事前調整が必要です。(施行令の制定及び基本指針(障害福祉サービス等及び障害児通所支援等の円滑な実施を確保するための基本的な指針)の改正について-p.3)
地域協議会を新設
改正案では、都道府県が「医療的ケア児等支援地域協議会」を設置する仕組みも示されています。(医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律の一部を改正する法律概要-p.1)
協議会には、次のような関係者の参加が想定されています。(施行令の制定及び基本指針(障害福祉サービス等及び障害児通所支援等の円滑な実施を確保するための基本的な指針)の改正について-p.3)
- 医療的ケア児等や重症心身障害者、その家族
- 学識経験者
- 保健所
- 病院・診療所
- 訪問看護ステーション
- 障害児通所支援事業所
- 障害児入所施設
- 障害児相談支援事業所
- 保育所
- 学校
- その他の関係機関や従事者
地域協議会は、個別の相談窓口ではありません。関係者が地域の支援ニーズや課題を共有し、必要な支援体制や社会資源について協議する場です。(施行令の制定及び基本指針(障害福祉サービス等及び障害児通所支援等の円滑な実施を確保するための基本的な指針)の改正について-p.3)
例えば、次のようなテーマが考えられます。
- 短期入所や通所支援の整備
- 専門人材の確保
- 保健・医療・福祉・教育の連携
- 学齢期から成人期への支援の引き継ぎ
- 災害時の情報連携
- 地域格差の是正
協議の結果については、関係者が尊重することが求められます。(医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律の一部を改正する法律概要-p.1)
コーディネーターが支援をつなぐ
医療的ケア児等支援センターや市町村の協議の場では、医療的ケア児等コーディネーターが重要な役割を担います。(施行令の制定及び基本指針(障害福祉サービス等及び障害児通所支援等の円滑な実施を確保するための基本的な指針)の改正について-p.3)
コーディネーターは、医療、保健、福祉、保育、教育、就労など、複数の分野にまたがる支援を調整します。
具体的には、次のような業務が想定されています。
- 新生児集中治療室に入院中から、退院後の在宅生活を見据えた支援
- 退院時の関係機関との調整
- 保育所や学校との連携
- 訪問看護や障害福祉サービスの利用調整
- 発達段階に応じた支援の調整
- 家族支援
- 成人期への支援の引き継ぎ
- 個別の課題解決に向けた支援
- 地域課題の整理や社会資源の開発・改善
都道府県の支援センターには、医療的ケア児等や重症心身障害児者、その家族への支援を総合調整するコーディネーターを配置することが基本とされています。(施行令の制定及び基本指針(障害福祉サービス等及び障害児通所支援等の円滑な実施を確保するための基本的な指針)の改正について-p.3)
市町村では、相談支援専門員、保健師、訪問看護師などの配置を促進します。市町村単独での配置が難しい場合は、都道府県が関与した圏域単位での配置も可能です。(施行令の制定及び基本指針(障害福祉サービス等及び障害児通所支援等の円滑な実施を確保するための基本的な指針)の改正について-p.3)
コーディネーターには、医療的ケア児等に関する養成研修の修了に加え、必要に応じて相談支援従事者初任者研修を受講することが望ましいとされています。(施行令の制定及び基本指針(障害福祉サービス等及び障害児通所支援等の円滑な実施を確保するための基本的な指針)の改正について-p.3)
なお、コーディネーターは支給決定を行う立場ではありません。サービスの利用申請や支給決定は、サービスごとの制度と自治体の手続きに基づいて行われます。(施行令の制定及び基本指針(障害福祉サービス等及び障害児通所支援等の円滑な実施を確保するための基本的な指針)の改正について-p.3)
障害福祉計画・障害児福祉計画にも反映
今回の改正内容は、障害福祉サービス等と障害児通所支援等の提供体制に関する基本指針にも反映されます。(施行令の制定及び基本指針(障害福祉サービス等及び障害児通所支援等の円滑な実施を確保するための基本的な指針)の改正について-p.3)基本指針では、地域生活への移行や地域生活の継続を支える対象として、医療的ケア者、医療的ケア児等、重症心身障害児者などが明記されます。(施行令の制定及び基本指針(障害福祉サービス等及び障害児通所支援等の円滑な実施を確保するための基本的な指針)の改正について-p.3)
自治体が作成する障害福祉計画・障害児福祉計画では、次のようなニーズを把握し、必要なサービス量を見込むことが求められます。(施行令の制定及び基本指針(障害福祉サービス等及び障害児通所支援等の円滑な実施を確保するための基本的な指針)の改正について-p.3)
- 児童発達支援
- 放課後等デイサービス
- 保育所等訪問支援
- 居宅訪問型児童発達支援
- 障害児入所支援
- 障害児相談支援
- 短期入所
- 生活介護
- 共同生活援助
生活介護、短期入所、共同生活援助などでは、医療的ケア者などの重度障害者について、個別に利用者数の見込みを設定するよう努めることとされています。(施行令の制定及び基本指針(障害福祉サービス等及び障害児通所支援等の円滑な実施を確保するための基本的な指針)の改正について-p.3)
また、都道府県の計画では、支援センターに配置する総合調整コーディネーターの人数を、市町村の計画では、医療的ケア児等に関するコーディネーターの人数を見込むことになります。(施行令の制定について-p.3)
令和11年度末までに整備を目指す体制
基本指針では、2029年度、つまり令和11年度末までに、次の体制を整備することを基本としています。(施行令の制定及び基本指針(障害福祉サービス等及び障害児通所支援等の円滑な実施を確保するための基本的な指針)の改正について-p.3)
都道府県
- 医療的ケア児等支援地域協議会を設置
- 地域協議会に支援センターが参画
- 支援センターに総合調整コーディネーターを配置
市町村
- 保健、医療、障害福祉、保育、教育などの関係機関による協議の場を設置
- 医療的ケア児等に関するコーディネーターを配置
市町村単独での整備が難しい場合は、都道府県が関与した圏域単位での対応も認められています。(施行令の制定及び基本指針(障害福祉サービス等及び障害児通所支援等の円滑な実施を確保するための基本的な指針)の改正について-p.3)
ただし、これは地域の支援体制を整備するための目標です。施行日にすべての自治体で同じ相談窓口やサービスが始まること、特定のサービスを自動的に利用できることを意味するものではありません。(医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律の改正を踏まえた基本指針の改正等について-p.1)
今後の課題
附帯決議では、改正内容を実効性のある支援につなげるため、次の課題が示されています。(医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律の一部を改正する法律附帯決議(令和8年7月10日)-p.4)
- 看護師や喀痰吸引等を行える介護従事者の確保
- コーディネーターが専門性を発揮できる体制の整備
- 保護者の付き添いがなくても通学できるための支援
- 職場や通勤中の介護を含む就労支援の検討
- 切れ目のない医療の提供
- 専門人材や施設の地域格差の是正
- 喀痰吸引等研修における事業者負担の軽減
- 先行事例の共有
- 強度行動障害の状態にある人や家族への支援
- 法律上の対象に該当しないものの、同様の支援を必要とする人への検討
制度上の対象や支援の方向性が広がっても、地域に専門人材、短期入所先、医療機関、通所支援事業所などが不足していれば、実際の支援にはつながりません。今後は、改正法の内容を各自治体がどのように具体的な相談窓口、サービス、人材確保策へ落とし込むかが焦点になります。(医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律の改正を踏まえた基本指針の改正等について-p.1)
まとめ
今回の改正案は、医療的ケア児を中心としてきた支援の対象を、成人を含む「医療的ケア児等」や重症心身障害者へ広げるものです。(医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律の一部を改正する法律概要-p.1)
主なポイントは、次のとおりです。
- 成人後も恒常的な医療的ケアが必要な人を支援対象に含める
- 重症心身障害者を支援対象に加える
- レスパイト、通学、就労、住居、ピアサポートなどの施策を拡充する
- 支援センターを「医療的ケア児等支援センター」へ改称する
- 支援センターに相談、防災、関係機関との調整などの機能を持たせる
- 医療的ケア児等支援地域協議会を新設する
- コーディネーターによる分野横断的な支援調整を進める
- 障害福祉計画・障害児福祉計画に、対象者のニーズや配置目標を反映する
資料では、施行日は2027年4月1日、地域協議会やコーディネーターなどの整備目標は令和11年度末とされています。(医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律の一部を改正する法律概要-p.1)(施行令の制定及び基本指針(障害福祉サービス等及び障害児通所支援等の円滑な実施を確保するための基本的な指針)の改正について-p.3)
ただし、具体的な相談窓口、サービスの利用条件、申請方法、自治体ごとの整備時期は、今後の法令・通知や自治体の運用によって決まります。記事公開時には、官報、e-Govの確定法令、確定版の基本指針、自治体の公式案内を確認したうえで、法案・改正案と確定した制度内容を区別して掲載する必要があります。(医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律の改正を踏まえた基本指針の改正等について-p.1)

